ラック・セキュリティごった煮ブログ

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(編集:株式会社ラック・デジタルペンテストサービス部)

チートはダメ、ゼッタイ!オンラインゲームを壊す存在について考える

皆さんこんにちは、デジタルテンペストサービス部のねいちゃーど、と申します。 普段は オンライン不正・チート対策診断 サービスの診断員として、日々ゲームの脆弱性 (チート行為が可能な箇所) の診断を行っています。 プライベートでは可処分時間のほとんどをゲームをして過ごしていますが、職務上、仕事時間中にもゲームをプレイすることがあるため1日のほとんどをゲームをして過ごしてる、と言っても過言ではないかも ... 。

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さて、「新しい生活様式」として基本的に外出することが少なくなった結果、以前と比較して体重が かなり 増えたことにさすがに危機感を覚えたのでジムに通い始めました。 これで体重が減って体力や筋肉が付いてくれれば良いのですが ... 。

「新しい生活様式」が標準となった今、増えたのは私の体重だけではなくゲームを遊ぶ人口も増えたように思えます。 例えば 美少女が全力でかけっこするのを応援するゲームでは3ヶ月足らずで 700万 DL を突破 したり、 光/闇の戦士となって世界を様々な危機から救う MMORPG では全世界でアカウント数が2200万を突破する など、(そもそものゲームが素晴らしい、というのもありますが) 「新しい生活様式」が標準的となり、他のアクティビティに充てていた時間を家で過ごすようになり、可処分時間が増えた結果によるものではないのでしょうか。

特に近年ではバーチャル Youtuber やプロゲーマーなどの配信者 (ストリーマー) の増加、および TwitchOPENREC, Mildom などのストリーミング配信専門のプラットフォームの台頭による影響で「『ゲームをプレイする』のではなく『ゲームをプレイしている様子を視聴する』人や、「視聴していた影響でゲームタイトルに興味を持ち遊ぶ」人も増えたことでしょう。

特にストーリーマーに人気 (だと思う) なのは Apex LegendsValorant, League of Legends などの競技性があり、公平性の高い (全てのプレイヤーがほぼ同一な条件下で遊ぶことができる Free to Play な) タイトルではないでしょうか。 その競技性や公平性の高さは各ゲームに実装されているランクシステムにおける上位のほんの一握りが取れる APEX プレデターや RADIANT, Challenger などの希少性の高さにも現れていると思います。

そんな 競技性や公平性が高く設計されているゲームにも、それらを壊してしまう存在 があります、そう (タイトルから分かるかと思いますが) チート (Cheat) です。
私もとあるゲームをフレンドとプレイしている最中にチーター (Cheater; チートを使用する人の意) とマッチングしたことがあり、友人が一瞬のうちに倒されている様子を見て「チーターだ!」「まず勝てないので一旦引こう」などとボイスチャットで意思疎通して伝わるほどに「チート」や「チーター」という言葉はある程度一般に伝わる言葉ではないでしょうか。*1

では、改めてこの「チート」という言葉が持つ意味は何か調べてみましょう。

チート(英: cheat)とは騙す、欺くこと。コンピュータゲームにおいて、広義には制作者が意図しない方法や結果により使用者が意図的に公平性を損なわせる行為のこと。

チート - Wikipedia

Wikipedia からの引用ですが、

コンピュータゲームにおいて、広義には制作者が意図しない方法や結果により使用者が意図的に公平性を損なわせる行為のこと。

は、先に私が記述した「競技性や公平性が高く設計されているゲームにも、それらを壊してしまう存在」と一致していますね。
チートの具体的な手法の説明や種類については Wikipedia におまかせするとして、

  • なぜチートを使う人がいるのか
  • チートを使うことでゲームにどのような影響があるのか

について考察してみたいと思います (以下の考察は、ほとんどの場合オンラインゲームを想定しています) 。


楽をしたい

近年の RPG では「以下のような設計のゲームが増えたな~」と思いますが、以前ではそうではなかったように思えます。*2

  • ストーリーを進めていると適正付近まで自動的にレベルが上がるようになっている
  • ゲームがあまり上手くないプレイヤーでも「レベルを上げて物理で殴る」アプローチを取らなくてもいいように難易度を操作できる (Easy / Normal / Hard / Extream のように)
  • ステージが難しくてクリアできない際に、代わりに CPU がプレイしクリアしてくれる機能

ゲームを進行させるために「攻略する必要があるダンジョン」「倒す必要があるボス」など、自分でもレベル上げはできるけど時間がかかって面倒 ... で楽がしたい、と思うユーザは多かったのではないでしょうか (だからこそ改造ツールで全キャラレベル MAX やお金 MAX などのコードが出回るわけですね) 。

また、レベル上げだけではなく「最強装備を作るためにレアな素材が多数必要」と言った場合にも、試行回数 (プレイ回数) を重ねれば手に入れられる確率は上がるものの面倒なので楽をしたい ... と思い 悪魔アイルー を入手し使用したユーザも多かったのではないのでしょうか。

名声を得たい

競技性のあるオンラインゲームには、たいてい「限られた人数しか獲得できない (レアな) 称号や Tier」や「特定のランク以上でシーズンを終えると手に入れることができるスキン (着せ替え要素)」が実装されているため、プレイの腕前 (や時間) と引き換えにレアリティのあるものを手に入れることができます。 しかし、これらの称号やスキンを自力で手に入れるためには並々ならぬ努力や練習、時間 (ものによっては才能) が必要です。 前述の「楽をしたい」にも少し通じますが、これらの限定的なものを簡単に手に入れたい ... となり、競技性のあるゲームでチート行為に手を染める人もいるのではないでしょうか。

自分の実力ではないもので手に入れたスキンや称号、意味ありますか ?

自身が他を圧倒することで楽しみたい

対戦ゲームにおいて、他プレイヤーを一方的にボコボコにして無双するのはある種の楽しさがありますが、それを簡単に実現するためにチートに手を出したり サブアカウントで自身よりも低いランクやレート帯でプレイし、敵をボコボコにする (一般的に Smurf; スマーフと言います) のはやめましょう (ゲームによってはスマーフは禁止されていたり、通報対象になったりします) 。

RMT を行い現金を稼ぎたい

利用規約等で禁止しているゲームは多いものの、前述の「レアな称号」等を手に入れたアカウントや、既に育成済のアカウントやゲーム内アイテムには一定の価値があり、RMT (Real Money Trade; 現実世界の現金でゲームのアイテムやアカウント、データなどを売買すること) 専門のマーケットにて売買されているのが実情です。 これらのアカウントやゲーム内アイテムを楽に手に入れるためにチートを使用する人も少なくありません。

チートを売って現金を稼ぎたい

これまでは「チートを使う (買う)」目線での話でしたが、もちろん買う人がいるからには売る (チートを作る) 人も存在しています。 なぜチートを作る人が存在しているのか ? と考えると、「チートは売れる (現金になる) から」でしょう。

ゲームを壊したい

後述の「チートがゲームに与える悪影響」でも記載しますが、正規ユーザはチート行為が横行しているゲームを楽しいとは思わず、次第にそのゲームから離脱し、他のゲームを遊ぶようになります。

ある企業が自社が作成しているゲームのユーザを増やしたいために、

  1. ユーザの数が多いゲームのチートを作成し無料で配布する
  2. ゲーム内でチート行為が横行する
  3. チート行為に飽き飽きしたプレイヤーがそのゲームから離脱する
  4. そのプレイヤーが他のゲームを遊ぶことで自社で作成しているゲームのプレイヤーが増える

... のかもしれません。 あくまで陰謀論じみた考え方で私は実際に見聞きした例はありませんが、もしこの例をご存知の方がいらっしゃいましたら はてなブックマーク 等でお教えください。


他にも「なぜチートを使う人がいるのか」という理由はありそうな気がしますが、大きく6つ記載しました。 さて、これらがゲームにどのような悪影響を与えるのか、考えてみます。


プレイヤー人口の減少

前述の「ゲームを壊したい」にも記載しましたが、正規ユーザは (チート行為を含む) 不正行為が横行しているようなゲームを遊びたい、とは思いません。 とても上手いことで著名なある FPS プレイヤーでさえ、「チート行為が横行しているために、当分の間はランクマッチをプレイしません」と言ったことは比較的記憶に新しいかと思います。 オンラインゲームはプレイヤー (人口) がいるからこそ成立するようなゲーム性や仕組みがあるため、チート行為等が横行してそもそもの人口が少なくなってしまうと、ゲームとして成立しなくなってしまいます。

そのため、

  • チート行為が横行することでプレイヤー人口の減少
  • 人口が減少することで、ゲームのマッチングが遅くなる
  • プレイ時間よりもマッチング時間が多いことは、ゲーム体験として悪いため、さらにプレイヤーが減少

といった悪循環が考えられます。

ゲームやブランドイメージの低下

近年ではインターネットや SNS が発達したことで、ユーザの誰もが情報発信を行うことができる時代になり、SNS 等に簡単に画像や動画をアップロードできるようになりました。 そのため、チートしている・チートされている様子の画像や動画が SNS 等に投稿され拡散されることで、そのゲームをプレイしていない第三者がそのゲームや制作会社に対して悪い印象を持つことが考えられます。

金銭的損害

例えば、課金することで強くなれる (Pay to Win) 設計のゲームにおいて、チート行為によって想定外のダメージを出すことができたり、無敵になれたりすることで、本来得られるはずだったキャラクターやアイテム、装備等の販売利利益が得られなくなることが考えられます。 また、課金要素がプレイヤーの強さに影響しないゲームにおいても、前述の通りプレイヤー人口が減ることで、課金する機会の損失にも繋がります。

課金に対する影響だけでなく、チート行為を行ったユーザを BAN (利用停止措置) するに際して、不正を行ったユーザのログ調査、および判断等にも人的リソースを必要とするため、ゲーム運営の内部的なコストが上がる ... ことも考えられます。


他にも悪影響はあるかと思いますが、大きく3つあげさせていただきました。

まとめ

チートについて長く書かせていただいましたが、いかがだったでしょうか。

ゲームはプレイをしていくとプレイヤー (人間) に内部的な経験値が積み重なり、上手くなったり、努力した結果、貴重な称号を得る喜びや達成感があります。 チート行為によってもそれらを手に入れることはでき、短期的には得をしますが、努力をすることをやめたり、難しいクエストやコンテンツをクリアした際に得られる達成感も得られなくなるため、長期的には損をします。

この記事を読んでくださっている方はチート行為を行うとは思いませんが、万が一もしやりたくなったり、やろうとしている友人を見かけたら本記事を思い出して止めさせるか、縁を切りましょう。

*1:この後、倒されたフレンドを復活させた後にそのフレンドがチーターを倒してしまう、という後日談も書いておきます

*2:近年のゲームがユーザに優しいのは、スマホゲームやストリーマーの配信、深夜アニメやライトノベルなど、消費できるコンテンツが以前と比較して爆発的に増え、可処分時間をそれぞれのコンテンツで奪い合う形になってるからこそ、なるべくハードルを下げてプレイしてもらおう、と考えているのかな、と感じます